建築業界の未来はどんな風景だろう

建築業界の景気動向を図る指標として、その年度の「新築住宅着工数」というものが業界データとして使われてきています。
よく言われているデータなので、建築以外の人も耳にする機会が多いと思いますが、バブル期には200万戸あったものが、昨年は70万戸まで減少しているというものです。
この数値についても、良く知られているものと思います。
多い方がいいだろうと感じる数値です。
では、一方で、「空き家」の戸数の推移はどうなっているかみなさんご存じでしょうか?
じわじわとその総数は増え続けて、なんと今では750万戸にもなっているのです。
仮に、今後10年の新築着工件数が70万戸前後で推移したとしても、なんと10年分にあたる数の住宅が、空き家として存在しているのです。
総住宅数に対しての空き家の比率でいうと、13.1%(2008年)。
つまり、10軒に1軒以上、空き家になっているのです。
賃貸住宅に限定して考察すると、2200万戸の総数ストックに対して、なんと20%の443万戸が空室です。実に5軒に1軒の割合。
そこには様々な理由があれど、有効利用されていない空室がこんなにもあるというのは、どうみても異常ととらえるべき事態ではないかと思います。
ちょっと違った角度で、
人口ピラミッドを見てみると新築着工数の将来が見えてきます。

2010年は住宅取得層として、リタイア直前層(54才〜64才ぐらい)、一次取得層(28才〜42才ぐらい)に人口ピークがきています。
これがあって、多少プチバブル的な部分がありました。
これが15年後の2025年になると、

リタイヤ直前層も減少していますが、一次取得層などは大幅に人口減となるのです。住宅を取得する層が激減するのです。
一体新築着工数はどれくらいまで減少するのでしょう…。
15年後って、まだまだ僕も57歳。
そう遠い話じゃない。
この現実をどう受け止めるのか?
10年分も新築しなくていいほどに住宅が余っていて、住宅を取得する割合の高い層の人口が大きく減り続ける…。
これは業界的にはかなりショッキングな事実のはずです。
突然今起こった事実ではないものの、まだなんとなく他人事のような空気が業界には流れているような気もしています。
「間違くなく企業は淘汰される。でも、それはウチじゃなくて他社が…」
本当にそうでしょうか?
どう甘く考えても、新築着工数が増えていく要素はなく、同時に活用されていない空室をこのまま増やし続けていていいはずがありません。
ではどうなるのか?
あるいはどうすべきなのか?
僕はその一つにリフォーム、リノベーションに答えがあると思います。
そもそも北米やヨーロッパに比べて、「既存住宅」の流通がほとんど起きていないのが日本。
既存住宅の流通(新築との対比割合)は13.5%程度ですが、アメリカが77.6%、イギリスが88.8%(平成20年)ですから、日本はとびぬけて新築至上主義で、中古を上手に活用していないのです。
日本の場合、自動車なんかもその傾向がありますよね。
ここをもっと活性化させていくことで、新しい価値観とか市場創造を生み出さないといけいないところに来ている気がします。
これからは伸びない新築着工数=景気後退でなく、それをカバーしてありあまるほどのストック住宅の活用数を増やし、15年後も、30年後も日本の住宅氏市場・住宅環境が活気あるものとして存在していたいものです。
上モノよりも土地がメインの不動産価値基準だったり、“中古”という響きが与えるマイナスイメージだったり、そもそも長期に耐えられるように造られていない構造だったりと、新築着工数を指標としているように、建てては売るというその数を成長拡大することこそが良いというような価値観など、様々な要因が複雑に絡みあっていて言うほど簡単ではないですが…。
たまにはこうした視点で業界の未来を考えてみることも大切な気がしています。
そんな熱い話のエッセンスをくれたのが、大学の先輩が参加されていた「ハ会」
すでに終了したイベントですが、ご興味のある方はUSTREAMで。

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