仕事が僕に教えてくれたこと 後編

これまで仕事をしてきた中で、もう一つ深く感じていることがあります。
それは、『ありがとう』の温度が圧倒的に違うことです。
ゼネコンでマンション設計をしていた頃、僕のお客様はディベロッパーの方であり、エンドユーザーの方(実際にそこに住む人)ではありませんでした。
だから、マンションを購入されて、そこに住まわれた方からの「ありがとう」を直接もらったことがありませんでした。
住宅メーカーに転職した理由は、もっとエンドユーザーに近いところで仕事がしたかったからです。
現場管理をしていた頃は1件1件のお客様と接する機会も多かったのですが、開発部門に移ってからは直接の声を拾うことも少なくなりました。
株式の上場を果たし、だんだんと厳しい競争にさらされて、みんなの目はお客様を見ているようで、実は社内のしがらみやライバル企業だったり、あるいは株価の動向だったりと、別の方向を向いていたように感じています。
誤解しないで欲しいのですが、僕の居た2つの会社はいまでも素晴らしい仕事を沢山していますし、社会貢献もしている立派な企業です。
僕なんて精一杯背伸びしても、足元にも及びません。
もちろん、このどちらにいた時も、それぞれに「ありがとう」はありましたし、感謝される仕事はしてきたつもりです。
でも直接的ではありませんでした。
今はとても「ありがとう」が近く、また温かい。
じゃ、どんな時に「ありがとう」を言ってもらえるか?
それは期せずして僕が自社の商品じゃないものを紹介した時、あるいは提案した時だったりします。
当然ですが、僕はマテリアルワールドの商品を販売するために営業しています。でも、僕は図面を見て、現場を見て、あるいはお客様が創りたい空間ややろうとしている計画・目的から、時に自社以外の商品を紹介したり、提案することがあります。
建築士でもある僕としては、それはある意味当然のことであり、ベストな提案をしただけなのですが、とても感謝されることがあります。
珍しいみたいです。(笑)
つい先日もそんなことがありました。
確かに、そんなことが出来るのは「マテリアルワールド」だからかもしれません。みんな少しでも自社のアイテムを売ろうと必死なわけですから。
そういった意味では僕はビジネスパーソン失格かもしれません。
でも結果としてすごく感謝してもらえたりします。
先週末も引渡しをしてちょうど半年経過した住宅設計をさせてもらったお客様のところに訪問してきました。
今では家族ぐるみのお付き合いをさせてもらっています。
「マテリアルワールド」だからスウィッチプレートはTOKYOジャケットかKOBEプレートを当然使っているかと言えば、デザインやカラーなど総合的に考えて、あえてそこでは自社の製品は使いませんでした。
半年ぶりに見ましたが、やっぱりその判断は正しかったことを再確認できましたし、とても喜んでもらえていました。
ビジネスとして捉えたら、ちょっとおかしいかもしれませんが、でも、とても嬉しかったです。
あの有名なリッツカールトンでも、満室の場合は別のホテルを紹介してくれるそうです。
またジュエリーブランドの『ショーメ』も、お客様が探しているようなジュエリーが自店になければ、決して他のものを無理やり進めたりせずに、「(お客様が)他店でステキなジュエリーに出会えますように」と言って、気持ちよく送り出してくれるそうです。
そんな話を聞くと、レベルは違えど、自分も少し似ているなぁと思い、少しうれしくなります。
その根底にあるものは一緒だと感じています。
お客様(いやその時はお客様でなくても)、自分が関わる全ての人の「笑顔」や「ありがとう」ほどうれしいものはありません。
それが自社の商品やサービスだったら最高ですけど、そうじゃないことだって沢山あるんですよね。
小さな会社なら尚更です。
ますます厳しい世の中になるからこそ、誰かの役に立つことで「ありがとう」を生きる糧として、マテリアルワールドらしくありたいと思います。

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